社内広報・企画

インナーブランディング動画の作り方|理念が仕事に結びつく企画と活用例

編集:MdiiiuM / 監修:須平 敦宣

公開 / 更新

会議机に置かれた小型プロジェクターと企画用のカード、ノート
会議机に置かれた小型プロジェクターと企画用のカード、ノート(AI生成イメージ)

この記事の要点

  • インナーブランディング動画では、理念の文言を覚えてもらうことより、社員が理念を使って判断しようとして迷う場面を題材にすると、上映後の話し合いにつなげやすくなります。
  • 題材は営業・現場・人事などの社員から理想と実際の行動の差を聞いて探します。そのうえで、インタビュー・記録映像・ドラマから目的に合う表現を選びます。
  • 上映後に話し合いの時間を設け、職場で似た迷いが起きる場面や、判断に必要な情報を集めます。後日、挙がった課題への対応が進んだかも確かめます。

インナーブランディング動画は、企業理念や大切にしている価値観を社員に伝えるための社内向け動画です。経営者のメッセージ、社員のインタビュー、仕事の現場を追う映像など、伝えたい内容に応じてさまざまな形を選べます。

理念を日々の仕事に結びつけてもらうには、社員が実際に判断に迷う場面を題材にする方法もあります。この記事では、企画の立て方と表現方法の選び方を解説し、架空の家具メーカーを舞台にした3分の社内ドラマと、上映後の話し合いの例を紹介します。

インナーブランディング動画で伝える内容を決める

インナーブランディング動画は、企業理念や大切にしている価値観を、社員が自分の仕事に結びつけて考えられるようにするための社内向け動画です。理念の文言を覚えてもらうことを目標にすると、内容は経営者の説明や理念の読み上げに寄りやすくなります。視聴した社員が明日の仕事でどう判断すればよいかを考えられる動画にするには、理念が実際に使われる場面を題材にする必要があります。

理念と仕事が結びつきにくい理由の一つは、理念の言葉が広く抽象的に書かれていることです。たとえば「お客様に誠実であること」という理念があっても、納期や費用や社内の手間がぶつかる場面では、どの行動が誠実なのかを社員が自分で判断しなければなりません。動画で扱う価値があるのは、このように理念を当てはめようとして迷う場面です。

企画の最初に、誰に見てもらい、見た後に何を話し合ってほしいかを一文で決めておきます。「入社3年目までの営業担当が、顧客に不利な情報を伝える時期について自分の考えを話せるようにする」のように対象と場面を絞ると、取材先や表現方法を選びやすくなります。1本の動画で扱える場面は限られるため、テーマは1つに絞り、ほかの候補は次回以降の題材として残しておくと内容がぶれません。

社員が迷った場面から企画の題材を探す

題材を探すときは、社員が仕事の中で理念をどう受け止めているかを聞き、経営層が伝えたいことと照らし合わせます。営業担当なら顧客との約束、製造や店舗の担当なら品質と作業時間、人事なら評価や配属の説明というように、部署によって迷う場面は異なります。複数の部署から話を聞くと、理念のどの部分が日常業務と結びつきにくいのかを確かめられます。

聞き取りでは、理念に沿ってうまく判断できた話に加えて、理想と実際の行動に差が出た場面も尋ねます。成功談だけを集めた動画を見ると、社員は自分の職場ではそうはいかないと感じやすく、話し合いも表面的になりがちです。迷った理由が人手不足や権限の不明確さ、評価の仕組みなど本人以外にある場合も、そのまま記録しておくと上映後の話し合いで使えます。

聞き取った話を動画に使う場合は、本人に使い方と公開範囲を確認します。必要に応じて人物や出来事の設定も変え、関係する人に不利益が生じないかを検討してください。上司や同僚への不満が含まれる話は、社内で誰のことか分かる形で再現しないようにします。

聞き取りの質問は、次のような形にすると具体的な場面が出てきやすくなります。

  • 理念を思い出しながら判断に迷ったのは、どのような仕事の場面でしたか。
  • そのとき、理念に沿った行動と実際に取った行動にはどのような差がありましたか。
  • 判断する前に誰かに相談できましたか。相談できなかった場合、何が妨げになりましたか。
  • 同じ場面が次に起きたら、どのような情報や権限があれば判断しやすくなりますか。

目的に合わせてインタビュー・記録映像・ドラマを選ぶ

題材が決まったら、伝えたい内容と上映する場面に合わせて表現方法を選びます。社内向けの動画でよく使われるのは、社員が自分の言葉で話すインタビュー、実際の仕事の様子を撮る記録映像、脚本を用意して場面を演じるドラマの3つです。それぞれ準備の手間と扱いやすいテーマが異なります。

次の表は、3つの方法を比べるために編集部が作成した整理です。社内で必要な準備は、撮影を外部に依頼するかどうかによっても変わります。

社員の迷いや失敗を扱うときは、実在の社員が出演するインタビューより、人物を架空にしたドラマのほうが率直な話し合いにつなげやすい面があります。一方でドラマは脚本の出来に左右され、現場の実態とずれると作り話だと受け止められるおそれがあります。脚本を書く前に聞き取りの内容を十分に集め、現場の社員に下読みしてもらうと、実態とのずれを減らせます。

制作会社のパラドックスは、ブランディング動画の解説記事で、目標と見せる相手から表現を選ぶ考え方を説明しています。同社は自社制作の事例として、愛隣会のパレードムービーで職員を制作段階から巻き込んだと紹介しています。

社員が企画や撮影に参加する進め方では、完成した動画を上映するだけの場合と比べて、制作の過程も理念について話す機会になり得ます。採用する場合は、参加者の業務時間を確保できるか、参加しない社員との温度差をどう埋めるかもあわせて検討します。

インナーブランディング動画の表現方法の比較(編集部作成)

インタビュー
向いている用途
理念に沿って判断した理由や迷いを、社員本人の言葉で伝えたいとき
主な準備
話し手の選定、質問案の作成、出演と公開範囲についての同意
向かない条件
失敗や社内の課題を実名で話してもらう必要があるとき
記録映像
向いている用途
理念が表れている作業の手順や現場の工夫を見せたいとき
主な準備
撮影できる工程と日時の調整、映してよい場所や情報の確認
向かない条件
判断の迷いのように映像に映らない内面を主に扱うとき
ドラマ
向いている用途
実在の人物を特定せずに、迷う場面や判断の分かれ目を描きたいとき
主な準備
聞き取りに基づく脚本、配役、場面の設定
向かない条件
題材の場面が決まっておらず、脚本の準備に時間をかけられないとき

出典:パラドックス:ブランディング動画の制作と活用事例

理念を伝える3分の社内ドラマを考える

小さな木製の椅子、木材のサンプル、配送用の箱と絵コンテのカード
小さな木製の椅子、木材のサンプル、配送用の箱と絵コンテのカード(AI生成イメージ)

ここからは、架空の家具メーカーA社を想定したオリジナルの作例です。実在の企業や出来事を基にしたものではありません。A社は「暮らしに長く寄り添う家具をつくる」という理念を掲げており、営業担当がこの理念を判断にどう使うかを3分のドラマで描きます。

物語は、営業担当の主人公が受注した特注のダイニングテーブルについて、工場から木材の入荷が遅れて納期が2週間ほど延びるかもしれないと連絡を受けるところから始まります。顧客は新居への引っ越しに合わせた納品を希望しています。主人公は、今すぐ顧客に伝えるか、工場が遅れを取り戻せるかを見極めてから伝えるかで迷います。

同じ部署の先輩は、確定してから伝えたほうが顧客を不安にさせずに済むと助言します。この先輩を理念に反する悪役として描くと、視聴者は先輩を責めるだけで話し合いを終えてしまいます。そこで先輩には、以前に不確かな情報を伝えて顧客を混乱させた経験があるなど、視聴者が納得できる理由を持たせます。

判断を左右する条件と相談先を描く

視聴者が自分の仕事に置き換えて考えられるように、判断を左右する条件をセリフや小道具で示します。作例では、遅れが確定する時期、顧客の引っ越し日、納品を分けるなどの代わりの提案ができるかどうかの3つを条件にします。工場の担当者が確定は来週の金曜になると話す場面や、主人公の手元にある引っ越し日のメモを映せば、説明的なセリフを増やさずに条件を伝えられます。

作例では、工場の生産管理担当と営業課長を相談先として登場させます。主人公が課長に相談しようとしたものの会議中で声をかけられない場面を入れると、理念を守りたくても相談する機会がないという実務上の障害も描けます。

結末を決めない構成表を作る

作例のドラマは、主人公が顧客に電話をかけるかどうかを決める直前で終えます。正解の行動を見せる場面を入れると、視聴者は正解を確認するだけで終わりやすくなります。結末を見せずに終えれば、上映後の話し合いで自分ならどうするかを社員が考える余地が残ります。

次の表は、架空のA社を想定した3分ドラマの構成例です。時間配分は目安なので、上映する会議の長さに合わせて調整してください。

【架空の作例】家具メーカーA社の3分社内ドラマの構成

0:00〜0:40
場面
営業所の朝
描く内容
主人公が顧客との打ち合わせメモを見返し、引っ越し日に合わせた納品を約束していることが分かる
話し合いにつなげる点
顧客とどのような約束をしていたか
0:40〜1:30
場面
工場からの電話
描く内容
生産管理担当が木材の入荷遅れを伝え、遅れが確定するのは来週の金曜になると話す
話し合いにつなげる点
不確かな情報を顧客にいつ伝えるか
1:30〜2:20
場面
先輩との会話
描く内容
先輩が過去の経験を理由に確定まで待つよう助言する。課長は会議中で相談できない
話し合いにつなげる点
待つ判断にある理由と、相談しにくい状況
2:20〜3:00
場面
主人公の机
描く内容
主人公が理念の書かれたカードと受話器を見比べ、手を止める
話し合いにつなげる点
自分ならどうするか、何があれば判断しやすいか

上映後に職場で話し合う問いを用意する

動画を上映しただけでは、社員が理念について自分の考えを話す機会は生まれにくいため、上映後に職場ごとの話し合いを組み込みます。管理職が進行役を務める場合、管理職が理念の解説を始めると、社員は異論や実務の困りごとを言い出しにくくなります。進行役には、意見をまとめる役割より、出てきた意見を聞き取って記録する役割を任せます。

問いは登場人物を評価させる質問から始めず、視聴者が自分の仕事に置き換えられる順に並べます。先輩の判断に賛成してもよいことを最初に進行役から伝えておくと、社員は異なる意見を出しやすくなります。作例のドラマを上映する場合は、次の3つの問いを用意します。

  • 主人公の立場なら、顧客にいつ、どこまで伝えますか。そう考える理由は何ですか。
  • 私たちの職場で似た迷いが起きるのは、どのような場面ですか。
  • その場面で理念に沿って判断するには、どのような情報や相談先、権限が足りていませんか。

議事メモに残す項目

話し合いの内容は、部署ごとに同じ形式の議事メモに残します。記録する項目は、出た意見の要旨、職場で似た迷いが起きる場面、理念に沿った判断を妨げている実務上の障害、次の会議までに誰が何を確認するかの4つです。発言者の名前を残さずに意見の内容だけを記録すると、社員は異論を口にしやすくなります。

人事や社内広報の担当者は各部署のメモを集め、複数の職場に共通する障害を洗い出します。たとえば課長が会議中で相談できないという意見が複数の営業所から出た場合は、相談の手段を決め直すなど、動画の外で対応する課題として経営層や関係部署に伝えます。

上映する動画と上映後の問いをまとめて企画したい方は、MdiiiuMの動画企画支援をご覧ください。

視聴後の理解と実務の変化を確かめる

上映後は、対象者のうち何人が視聴したかを部署ごとに確かめます。出張や休暇、シフト勤務で上映会に参加できなかった社員には、後から視聴できる機会を設けましょう。アンケートでは視聴の有無も尋ね、見た人と見ていない人を分けて回答を確認します。

理解を確かめる質問では、理念の文言を覚えているかより、判断の場面について尋ねます。たとえば「顧客に不利な情報を伝えるか迷ったとき、あなたの職場では誰に相談しますか」と尋ねると、相談先を知らない社員がどの部署に多いかが分かります。選択式と自由記述を1〜2問ずつ組み合わせれば、回答の負担を抑えながら具体的な困りごとも集められます。

実務の変化は、上映の翌月に職場ごとの困りごとを改めて聞いて確かめます。話し合いで挙がった障害が解消されたか、新たに相談された事例があったかを、前月の議事メモと比べて記録します。変化がなかった場合は、動画の題材が職場の実態に合っていなかったのか、障害への対応が進んでいないのかを分けて振り返ります。

離職率や社員満足度の調査結果を並べて見ることもできますが、これらの数値は採用状況、評価制度、業務量の変化など多くの要因で動きます。動画を上映した時期と数値が改善した時期が重なっても、動画の効果だと断定することはできません。数値は参考として記録し、判断の場面に関する回答や議事メモと合わせて、次の動画の題材を選ぶ材料にします。

まとめ

インナーブランディング動画の企画は、社員が理念を当てはめようとして迷った場面を一つ見つけるところから始まります。次の作業として、営業・現場・人事などから1人ずつに声をかけ、第2章の質問を使って、理念と実際の行動に差が出た場面を聞いてみてください。

よくある質問

社員に出演してもらうときは、どのような同意を取ればよいですか。
動画を社内のどの範囲で、いつまで上映するかを書面などで伝えたうえで同意を得ます。退職後も動画を使い続けるか、社外の採用活動に転用する可能性があるかも事前に決めておくと、後から扱いに困りません。上司からの依頼は断りにくいため、出演を断っても評価に影響しないことも明確にしておきます。具体的な取り決めは、自社の法務や人事の規程に沿って確認してください。
動画の長さはどのくらいにすればよいですか。
長さは上映する場面から逆算して決めます。定例会議や朝礼の中で上映してそのまま話し合う場合は、話し合いの時間を確保できる短い動画のほうが扱いやすくなります。この記事の作例を3分にしたのもそのためです。研修の一部として上映するなら、複数の場面を含む長めの構成も選べます。
社内向けに作った動画を、採用サイトやSNSで公開してもよいですか。
社内向けの動画には業務上の課題や社内の事情が含まれやすいため、そのまま社外に公開すると想定していない受け取られ方をする場合があります。公開を検討するときは、出演者の同意の範囲、映っている情報、関係部署の了承を改めて確認します。採用に使う場合は、求職者が知りたい内容に合わせて構成を見直すほうが目的に合います。
理念の言葉が曖昧で、社員によって解釈が分かれている場合でも動画を作れますか。
作ることはできますが、先に経営層と社内広報の担当者で、判断の場面で理念が何を優先するのかを話し合っておきます。解釈が分かれていること自体を題材にし、上映後の話し合いで各職場の解釈を集める進め方もあります。集まった意見を経営層が確認して理念の説明を補う資料を作れば、動画を理念の言葉を見直すきっかけとしても使えます。

出典・参考資料

記入例・比較表は、考え方を説明するための編集例です。実際の案件や成果を示すものではありません。

この記事の監修者

放送作家の須平敦宣

須平 敦宣

株式会社MdiiiuM 代表取締役・放送作家

「めざましテレビ」「ガキの使い」「徹子の部屋」などに携わる放送作家。株式会社MdiiiuMの代表として企業の広報や商品PRの企画を提案しています。

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監修範囲:本文・作例・支援範囲を含む今回の原稿について、2026-10-14に須平さんの監修済みとユーザーが確認。。監修日:

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